アナウンサー・岸田さんの青色申告チャレンジ第6回【申告書に直接入力するものとは?】

アナウンサー・岸田さんの青色申告チャレンジ第6回【申告書に直接入力するものとは?】

確定申告シーズンが終わり、ほっと胸をなでおろしています、という方も多いのではないでしょうか。フリーアナウンサーの岸田さんがチャレンジする青色申告チャレンジも第6回目を迎えました。「自分が何を理解していなかったかがわかってきた!」という岸田さん。確実に理解を進めているところに、宮﨑先生は明確な回答を示してくださいます。確定申告まであともう一歩、大事に進めていきたいところです。

なお、今回は詳細な仕訳のお話が出てきますが、岸田さんのケースであり、すべての方々に当てはまるものではありません。ご注意くださいませ。

「FinFinで入力するもの」と「申告書に入力するもの」を明確に

宮﨑さん(以下敬称略):
さて、確定申告書の作成まで順調に進んでいますね。岸田さん、いまの時点でわからないことはありますか?いろいろと勉強したので、逆に確認したいことが増えたんじゃないかな?

岸田さん(以下敬称略):
そうなんです!「自分が何を理解していなかったのか」がわかってきて。すごく視界がクリアになりました。

宮﨑:
すごくいいことです。誰しも「何がわからないかがわからない」からのスタートですからね。着実に知識を身に着けられる段階に来ているということだと思います。

岸田:
はい。早速ご質問なんですが......先日、自宅で作業を進めていて、私はまだFinFinで入力するものと、申告書に直接入力するものの区別ができていないかもしれない、と思いまして......。

宮﨑:
それは大事ですね!とても大事なので、ここでまとめておきましょう。

日々の会計に含めず、「申告書」の作成時に入力するもの(岸田さんの場合)

■給与
事業用口座に振り込まれているとしても、会計では「事業主借」とし、「売上」にしないようにします。日々の仕訳(FinFinでの入力)で「売上」にしてしまうと重複する金額が発生するので、注意が必要です。

■国民年金・国民健康保険
岸田さんの場合は企業側で年末調整を行わないため、勤め先である会社に控除証明書を提出せず、ご自身の確定申告で申告する必要があります。

■生命保険
国民年金・国民健康保険と同様、申告書に直接入力します。

■ふるさと納税
確定申告で申告するため、「ワンストップ特例」は利用しません。仮にワンストップ特例の届出をしても、確定申告することでその届出の効力がなくなります。

■医療費控除
医療費控除に該当する医療費は、「医療行為」になるものだけを申請します。医療行為のための通院に必要だった交通費なども含めることができます。

■iDeCo(個人型確定拠出年金)など
iDeCoのほか、小規模企業共済等掛金なども控除対象となります。NISAは控除対象になりませんので、間違えないようにしましょう。

宮﨑:
国民年金・国民健康保険は、できれば事業口座でなくプライベート口座からの引き落としにしましょうとお伝えしていますが、それは日々の入力と申告書での入力を混同してしまわないようにするためなんです。......どうかな、いまならよく理解できる、ということも多いのではないでしょうか?

岸田:
はい、本当に。頭では個人のお金と事業のお金を分けて考えられていても、間違えて入力してしまうかもしれないですしね。改めてわかってきました!

家事按分はどうする?

岸田:
以前、先生に「家事按分」の考え方について教えていただいたのですが、その後、私の場合の具体的な割合を決めることができていないので、ご相談させていただきたいです。

宮﨑:
わかりました。ひとつひとつ確認していきましょう。

地代家賃の家事按分

岸田:
家賃はどう考えればいいでしょうか?以前(※第3回)のときにもお話をしてもらっているのですが、なかなか難しくて......。

宮﨑:
岸田さんはパラレルで働いていらっしゃる(2種類以上の仕事をしている)から、確かに難しいところだと思います。フリーランスの方々がよく採用する方法は、「1日8時間労働」と考え、24時間分の8時間、つまり「3分の1」として家事按分するというものです。

岸田:
そのお話をしていたいたのを覚えています。

宮﨑:
岸田さんは会社員として働いている時間もありますよね。いままでも岸田さんの働き方を伺ったうえで、「確実に家で仕事をしている時間」を10%、つまり2.4時間とするくらいが妥当かなと考えています。多くて15%くらいでしょうか。
※宮﨑先生は岸田さんから「家における勤務体制」なども確認した上で言及しています。

岸田:
10%か15%ですね。わかりました。

宮﨑:
もちろん、月や週によって変化はあると思います。でも、今回のように「こういう根拠がある」という説明をすることができれば、不自然のない計上だと言えますよ。ここでの計上の仕方はふたつあります。どちらを選んでも大丈夫。

①地代家賃を「事業主借」10%で計上(家賃を個人の口座で支払っているため。事業口座から全額支払っている場合には、「事業主貸」で90%)

②家賃の10%を算出し、10%の金額で地代家賃として計上する
(家賃が10万円であれば、1万円を地代家賃として計上)

岸田:
それなら、私は②の方法にしようかな。1ヵ月あたりの金額を計算して毎月計上することにしますね。

服・衣装の家事按分

岸田:
衣装についてはサブスクのレンタルサービスを利用しています。レンタルした服については完全に仕事でしか使っていないのですが、100%計上しても問題ないですか?

宮﨑:
はい。その場合は100%で大丈夫でしょう。プライベートでも仕事でも使っている服というのがあれば、利用度によって10%、20%など家事按分する必要がありますが、「仕事だけに使う」という区別ができるのであれば問題ありません。

岸田:
よかった!サブスクの服は本当に仕事にしか着ていないので、経費にできるととても助かります。それ以外の服は家事按分することにしますね。

宮﨑:
はい。岸田さんにはご実績もあるし、投資の意味合いもありますので、ある程度高めの割合で計上することができるんじゃないかな。「消耗品費」で計上してください。ただし、悪用はしないでくださいね(笑)

岸田:
はい、それはもちろん......!

携帯電話(スマートフォン)の家事按分

岸田:
携帯電話はどうですか?

宮﨑:
携帯電話については仕事のメインになるツールなので、強気設定もありうると思います。ただし、妥当な根拠として先ほどの10%と揃えてしまうことがありえます。本体も同じ数字にできますね。

岸田:
携帯電話は絶対に仕事で必要ですし、やはりお金がかかるので経費にできると助かります!勘定科目は「消耗品費」でいいですよね。

宮﨑:
はい。10万円未満は消耗品で経費計上してください。

岸田:
パソコンなどもそうですよね?

宮﨑:
はい。......そうだ、今後のことを考えて、「少額減価償却資産の特例」についてお話しておきましょうか。パソコンや家具などは10万円未満であれば消耗品ですが、10万円以上の場合、30万円未満のものであれば一括で経費計上できるという特例です。本来は減価償却資産として法律で定められた耐用年数で分けて計上しますが、それを一度で済ませることができます。

岸田:
なるほど。そうすると処理も簡単になるし、その年の節税もできるということになりますよね?

宮﨑:
そうです。これは青色申告の特典なので、ぜひ活用しましょう。11月か12月あたりに来年への投資として購入できれば理想です。9月、10月にはその年の会計がある程度把握できていなければ、どれくらい税金を納めることになるかの予測ができません。未来の投資をどれくらい行えるかざっくり計算するためにも、できるだけがんばって帳簿付けをしていきたいですね。

岸田:
わかりました!その場合はどういった科目で計上しますか?

宮﨑:
FinFinの場合は「工具器具備品」で入力してください。

勉強のための資金について(書籍・資格会費)

宮﨑:
勉強のための書籍は経費にできます。ただ、本には「個人的にも読む本」や「仕事の後でも活用する本」などがありますので、その場合の100%計上は避けておきましょうか。50%と、もう一つ下の25%といった具合に、経費計上する割合を何段階か設けるのがいいかなと思います。ただ、岸田さんはいわば「オールジャンル」のひとですから、書籍は積極的に購入していいのでは?仕事のために購入した本と言い切れるものであれば、100%計上でも問題ありません。

岸田:
確かに、個人では買いませんね(笑)。仕事があるからこそ読む本というのはとても多いです。

宮﨑:
ですよね。「新聞図書費」の勘定科目で計上しましょう。こちらも悪用せず、しっかりとした根拠があれば100%という数字も使えますよ、ということで考えてくださいね。

岸田:
わかりまりました。大事なことですよね。──あ、資格に関するお金はどうなりますか?月会費のようなものがあるのですが......。

宮﨑:
資格については少し難しいところがあります。例えば、仕事に使うから取りたい資格があったとして、その取得のための費用は計上できない可能性が高いです。まだその資格を利用しての仕事が成立していない段階ですしね。ただし、維持・管理に関しては計上できる可能性があります。私も税理士資格を取るまでは勉強や受験のためになかなかの金額を使っていますが、経費にはできませんね。

岸田:
ええ!?開業費なんかにはなりそうな気が......ならないんですか?

宮﨑:
なりそうですよね。ならないんです(笑)。それは事業ではなく個人に帰属するものと考えられています。最終的には事業につながるとしても、学費や受験のお金が経費にならない......と説明すると、イメージがつきやすいかな?

岸田:
ああ、なるほど。確かにそうですよね。

宮﨑:
資格取得後はそれを有効活用して事業を進めることになりますので、税理士会の会費なども経費計上できます。岸田さんがおっしゃった月会費も計上することができますね。科目は、諸会費、支払手数料、情報を得る手段の延長という考え方で新聞図書費とする方法もあります。FinFinの場合は「研修費」がちょうどいいかな?

岸田:
だいぶ細かなことがはっきりしてきました......!ありがとうございます。

宮﨑:
よかった。経費については今後も悩むと思いますが、「はっきりわからない」「全額計上するには罪悪感がある」というものは、全額でなく25%、50%などで数字を決めて計上するのがいいかなと思います。個人事業主は仕事とプライベートが混同するものであるというのは大前提ですし、明確に振り分けることは難しいものですからね。

岸田:
はい。そして、その割合を悪用しないこと、ですよね。自分で判断して決めることも多いし、会計の大事なところだなと改めて思いました。

宮﨑:
そうです。その気持ちがとても大事です。

いよいよ売上の入力!

入力画面について確認するシーン

入力画面について確認するこんなワンシーンも。

宮﨑:
さて、実現主義・現金主義のどちらを取ることにしたか覚えていますか?

岸田:
お金が振り込まれた時点で売上計上する現金主義ですね!

宮﨑:
そうです。先日もお伝えしたとおり、12月分だけは実現主義として、お金を受け取る権利としての「売掛金」という勘定科目を使います。12月に発行した請求書(1月入金)の金額の科目を、売掛金に変更しましょう。

借方科目 金額 貸方科目 金額
売掛金 30,000円 売上 30,000円

また、1月に入金した際には「売上」という科目は使わずに、売掛金が貸方科目に入ります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 30,000円 売掛金 30,000円
(売掛金の消滅)

このような考えのもと、FinFinの場合は「売上が発生した日」を変更することにより、実現主義(発生主義)に切り替えることができます。

具体的な入力方法はこちらを参考にしてください。
Q.スマホ会計 発生日について(現金入力)

宮﨑:
岸田さんが事業用の口座をつくる以前の報酬は、プライベートの口座に入っていると思います。切り替えたのは秋ごろでしたよね。その振込は「事業主貸」で計上しましょう。事業が売上の一部を個人に貸している状態、と考えます。これで、売上としてはきちんと計上されることになります。

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
事業主貸 99,790円 売上 99,790円 取引先○○(など)
事業主貸 10,210円 売上 10,210円 源泉徴収

岸田:
これで経費と売上の入力の仕方が理解できました!

宮﨑:
はい。最後に、現金出納帳の残高がマイナスになっていないか確認してみましょう。ここがマイナスになってしまうと、なにかの間違いがあるかもしれません。

岸田:
1年間を指定してPDFを作成ですよね?──あれ?すごいマイナスになってしまっていますが......?

宮﨑:
科目や金額に間違いがあるかもしれないですね。月合計で不自然なところを見てみましょうか。......ううん?4億円?

岸田:
わあ!私、ファミリーレストランで4億円使っていることになっていますね......!?レシートを読み込ませて、まだ修正していないぶんだ!

宮﨑:
はい、わかってよかった(笑)。実はよくあることなんです。このくらいはっきり間違えているとわかりやすくて逆に助かりますね!しっかり修正していきましょう。

岸田:
はい。でも、どうしても数字が合わないこともありそうです。マイナスで終わってしまった場合はどうしたらいいですか?

宮﨑:
もしマイナスで終わった場合には、「事業主貸や事業主借」というプライベートのお金で調整することになります。これはまた来年度のスタートのときに入れる数字です。できるだけ小さな金額であるに越したことはありませんので、ミスがないように見てみてください。

岸田:
改めてチェックしてみます。月単位で見ると間違ったところがわかりやすいんですね。それにしてもファミレスで4億円って!びっくりした!(笑)

次回、いよいよ申告書の作成とe-Taxでの申告!

次回は申告に必要な数字や書類、マイナンバーカードなども含めてすべてを揃え、実際に申告書の作成を行います。岸田さんはe-Taxでの申告まで進め、「確定申告完了!」とすることができるでしょうか?見守っていてくださいね。

また、読者のみなさまにも、これからe-Taxで確定申告される方や、申告の準備を進めている方がいらっしゃるかと思います。e-Taxでの確定申告にはマイナンバーカードと、マイナンバーカード作成時に設定したパスワードが必要です。この点にもご注意くださいませ。