ナツキさんの青色申告チャレンジ第8回【固定費をどこまで削減する?空間やオフィスも投資の対象に!】

ナツキさんの青色申告チャレンジ第8回【固定費をどこまで削減する?空間やオフィスも投資の対象に!】

青色申告チャレンジ、前回は「副業300万円問題」と、その背景にある過剰な節税対策についての解説でした。今回は、空間への投資を例にとってどこまで経費を節約するべきなのか、というテーマを考えていきます。

固定費はとにかく削減するべき?

経費には大きく分けて固定費と変動費の二種類があります。変動費とは売上が大きくなるほど大きくなる費用のことで、原材料費などが代表的な変動費になります。

逆に固定費は、売上が大きくなっても変わらない費用を指します。たとえば人件費やオフィスの賃料が代表的なものとして挙げられます。そして経営の基本的な考え方の一つに、固定費をなるべく削減した方がよいというものがあります。

もちろん無駄な経費を抑えるのは重要ですが、何を「無駄」と考えるかは人によるでしょう。宮﨑先生は、事業をしていく上で大切なものはたくさんあり、コスト削減をしすぎるのはよくないこともある、と言います。

わかりやすい例としては、飲食店の店舗にかける賃料が挙げられます。店舗の賃料は固定費ですから、原則的には削減した方がよいことになります。しかし、飲食店にお客様が入るかどうかは立地にも大きく左右されますから、金額だけを見て賃料の安い場所へ店を移動すると、店に来てくれるお客様が減って利益が下がるかもしれません。

「『売上に対して、この家賃は見合っていますか?』とたまに相談されるのですが、その時は、じっくり考えるようにしています。お茶を入れに行って、歩きながらじっくり考えて判断することもあります(笑)。とても難しい問題で複雑な要素が絡み合っているので、簡単には決められません。一見無駄なように見えても、それは大切な費用だったということもありえます。私が相談を受けた際には『数値が◎◎だから、これは無駄です!』と言い切ってしまわないように、気を付けています。」

費用は無駄かどうか慎重に考えよう

宮﨑先生は、無駄なように見える大切な費用の一例として、コワーキングスペースを上げました。家で作業をしているのであれば、別にコワーキングスペースを借りるのは無駄だと考える方が多いかもしれません。

しかし、コワーキングスペースで働くと仕事がはかどるのであれば一種の業務効率化になりますし、コワーキングスペースに集まる個人事業主同士で知り合い、人脈を広げることが事業の上で大きなプラスになるかもしれません。ですので『コワーキングスペースは固定費だから経費削減のために解約しちゃおう♪』といきなり行動するのは、良くないかな?と考えます。

それでは、コワーキングスペースの賃料は経費として計上できるのでしょうか。「家ではなくコワーキングスペースで仕事をしている時間が増えるのですから、経費として計上している家賃の割合を減らす、またはゼロ円にして、コワーキングスペースの経費を計上するという形が適切だとの説明でしょう」というもっともな解説でした。

もちろん、その分の家賃の費用計上は少なくなりますが、コワーキングスペースを使いたいと考えているのであれば、もったいないと切り捨てずにチャレンジしてみるのもよいかもしれません。

空間にかけるお金も時には大切

ナツキさんは空間アドバイザーという仕事をしていますから、さらに話題を拡大して、個人事業主は空間にどこまで経費をかけてよいのか、かけるべきなのかを考えてみましょう。

ナツキさんは基本的に自宅で仕事をしていますが、InstagramなどのSNSでの動画配信を定期的に行っています。お客様の家で向かうまでの移動中や待機時間に配信を行いたくても、一般的なコワーキングスペースでは静かに作業をすることが推奨されており、声を出せないので配信には向いていないそうです。

「私の仕事としては配信に使う空間もこだわりたい。お客様に『こんな素敵な場所を作りたい』と思っていただくことが大事だからです。コワーキングスペースは無機質でそっけない内装であることが多いので、その点も配信に向いていないな、と感じています。たとえば素敵な内装のカフェなどで、店員さんに声をかけて、動画配信をしてもよいかどうか尋ねたりして、配信に仕える場所をいつも探しています」

空間アドバイザーとしてのイメージを守るための出費ですから、宮﨑先生によれば、仕事に関係していて売上につながっていること前提ではありますが、これは立派に経費として認められるそうです。空間を大切にすることが求められる職業であれば、空間にお金をかけることは費用となりえます。

ヒーリングサロンPonoの内装

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たとえば、自宅を店舗として使っている方にとっては、お客様が足を踏み入れる空間にお金をかける重要性は高くなってきます。空間づくりはお客様の心地よさにも関係し、満足度にも関わってくるからです。実際、ナツキさんは自宅を仕事場にしている個人事業主の方に、インテリアコーディネートを依頼されることも多いそうです。

上記のお写真は、ナツキさんが以前空間づくりを担当した「ヒーリングサロンPono」さんの内装です。ナツキさんの手によって、柔らかくくつろげる空間に変わっています。

「他には、アパートの一室で助産院を開いている方から依頼を受けて、一緒に空間づくりを行ったことがあるんです。『ちゃぶ台があるほっとする空間』という希望だったので、ぴったりのちゃぶ台を探してきたんですよ。自然と人が集まる場所、そういうイメージでした」

ナツキさんのようなプロフェッショナルは、お客様のイメージをお聞きして、それを実際の部屋に落とし込むことに長けています。自分の手で内装を整えれば安く済みますが、理想を実現したいのなら、外部の方へ依頼した方が良いでしょう。素敵な空間を作り出すコストは、事業を営む上での必要経費という考え方もあります。

使う年と使わない年を決めよう!

初期投資や固定費を抑えるのは事業の鉄則とも言われていますが、ここではあえてその逆の方向性の考え方も大切だという見方を紹介させていただきました。空間にかかるお金は「無駄」と切り捨てられがちですが、事業内容や事業主の価値観によっては、十分に大切な経費となりえます。

しかし、だからといって利益も上がらないままでお金を使いすぎてしまうのも問題です。経費の管理について、どのように取り組めばいいのでしょうか。

「費用を使う年と使わない年を決めるのが良いと思います。「使う」と決めた年は、今後のために思い切り投資する。そして、使わないと決めた年は投資分に見合う売上を上げるために注力して、売上が上がらないのであれば軌道修正を考える。使いすぎもよくないし、使わなさすぎるのもよくないのです」

「これは必要だ」と思えるのであれば、思い切り投資をすることも必要です。そして使った分は稼ぐ、という考えで事業を成長させるのが、気持ちの良い働き方ともいえるでしょう。

今回は前回に引き続き、費用や投資についてお伝えしました。これはあくまでも一つの見方にはなりますが、事業を営む上では節約一辺倒ではない柔軟な考え方が必要です。これからも確定申告だけではなく、会計についての様々な情報について、お伝えしていきたいと存じます。

佐藤ナツキ「キュン♪から始まるお部屋ストーリー」
宮﨑会計・税理士事務所(宮﨑雅大税理士事務所)
ヒーリングサロンpono