プライベートと事業用のお金をわける「事業主勘定」を理解しよう!

プライベートと事業用のお金をわける「事業主勘定」を理解しよう!

少し仕訳作業を進めると、「事業主貸(勘定)」「事業主借(勘定)」といった科目が登場します。簿記の上では「事業」と「自分」が別に存在していると考え、その間でお金を貸したり借りたりした体裁で計算を進める必要があるのです。これを「事業主勘定」といいます。以下、詳しくご説明します。

1.事業主勘定とは?

事業主勘定は、個人事業者だけが利用する勘定科目です。「事業主貸勘定」と「事業主借勘定」があり、たびたび事業主貸、事業主借と省略して呼ばれます。冒頭にお伝えしたように、会計上は「事業」と「自分」がいると考え、その間のお金のやりとりは明確に表さなければなりません。事業主貸、事業主借の科目を使うことで、事業のお金か、プライベートのお金かをはっきりと区別していくのです。

2.事業主貸勘定...事業から個人に「貸している」お金とする科目

事業主貸は、事業から個人にお金を貸すときに使う勘定科目です。逆を返せば、個人が事業からお金を借りるときに使う勘定科目ともいえます。「事業視点」では個人に貸している状態になるため、「事業主貸」という文字になります。自分にとっては「借りている」状態なのに、事業視点であるため「貸している」ということになるのです。混乱しやすいので、あくまでも科目名は「事業視点」であることを覚えておくといいでしょう。

事業用の口座から家計に使うお金を引き出したときは、事業に対して家計分の貸しができたことになりますので、事業主貸となります。また、飲食をしたときに事業のお金を使ったものの、特に事業に関係のない内容であったのなら、それも事業からお金を借りたことになり、事業主貸です。

【仕訳の例】

・生活費を事業用の預金から20万円引き出した

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
事業主貸 200,000円 普通預金 200,000円 生活費

・事業用口座から引き出した5万円で、国民健康保険料を支払った(窓口支払)

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
事業主貸 50,000円 現金 50,000円 国民健康保険料
3.事業主借勘定...事業が個人から「借りている」お金とする科目

事業主借は、事業が個人からお金を借りるときに使う勘定科目です。逆を返せば、個人が事業へお金を貸すときに使う勘定科目ともいえます。これも、視点が「事業」にあると考えるとわかりやすいでしょう。事業に使いたいお金を個人から借りたときや、事業で使うものを個人のお金で支払ったときには「事業主借」で計上します。

【仕訳の例】

・事業用の現金が少なくなったため、個人の預金(現金)から15万円入金した

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
現金 150,000円 事業主借 150,000円 事業資金

・事業用口座に利息が5円入金された

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
普通預金 5円 事業主借 5円 利息
4.確定申告に向けての考え方

確定申告に向けて、次のようなことを頭に入れておきましょう。

事業主貸は経費にならない

「事業用のお金で国民健康保険料を支払った」場合などは事業主貸として処理します。これは経費にならないため注意しましょう。国民健康保険料も税金のひとつとして捉えられており、経費にできない税金は事業主貸、経費にできる税金(税込計算処理をしている場合の消費税、事業に関わる固定資産税など)は、「租税公課」という科目を利用します。

家賃の一部を「事務所」として家事按分している場合

家賃を「個人のお金」「個人の口座」で支払っており、一部は事務所として利用しているために家事按分を行っている場合も、事業主勘定で処理します。

例えば、面積で家事按分を行っているとして、事務所面積が30%(家賃の30%が事務所費)であれば、この30%を事業主借の科目で処理します。事業が個人から家賃としてのお金を借りている、という体裁になります。

・家賃10万円の30%を事業の経費として計上する

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
地代家賃 30,000円 事業主借 30,000円 事務所家賃

なお、家賃を「事業のお金」「事業の口座」で支払っている場合には、貸し借りの立場が逆転します。事業から個人に家賃の70%を貸している状態になるため、70%が事業主貸です。個人が事業から家賃としてのお金を借りている、という体裁になるわけです。基本的には個人の生活領域のほうが大きく、個人のお金で支払うことが多いと思いますが、考え方として頭にいれておくとよいでしょう。

貸し借りした分は精算しなくていいの?

貸し借りが発生しているため、「最後に精算が必要なのでは?」と思われるかもしれませんが、結果的には「どちらも自分」という概念に立ち戻ることになり、精算は不要です。とはいえ、稼いだお金で生活しているはずなのに、「会計上はまるで生活費を引き出していないことになっている(=事業主貸での計上がない)」などの不自然さがあれば、それは会計上なにか間違いがあるということにもなります。確定申告時、各科目の最終金額はチェックするようにしましょう。

まとめ

事業主勘定は混乱しやすいものと言われています。「事業主」という言葉で個人事業主であるご自身を思い浮かべてしまうと思いますが、「事業を主体として考える」と切り替えて利用しましょう。業種にもよりますが事業主貸・事業主借の勘定科目を利用することは多く、特に、個人のお金で事業のものを購入したときなどは事業主借でもれなく計上することで、税金の負担を減らすことができます。面倒だからと処理を怠ることなく、しっかりと計上してください。

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記事監修者紹介 久保佑紀先生久保佑紀税理士事務所
税理士久保佑紀先生

通信会社でシステムエンジニアとして働くが、結婚を機に退職。その後約10年間、中小企業の経理職や税理士事務所で働き、2023年に個人税理士事務所を立ち上げる。税務業務を中心にお客様のサポートをしながら、2 人の娘を育てるママ税理士。