いまの勤め先から飛び出して自分で事業を起こしたい。会社に所属しながらも自分がやりたい事業がある……そのようにして「個人事業主」を目指す人々が増えています。個人事業主になるためにまず必要なのは、「自分で事業として進めたいと思う仕事」です。開業について調べはじめてこの記事に辿りついた方は、「もう最初の一歩を踏み出している」と自信を持ちましょう。この記事では、そこからの開業手続きや事業を進める準備などについて、具体的にご説明します。
目次
事業を開始する際には、まず「開業届」を提出しましょう。開業届とは、新たに事業を開始する際に税務署に提出する書類のことです。これから開業するという方にはなかなか結びつかないことかもしれませんが、事業を行うことは「新たな所得を生み出すこと」であり、さらに言えば「納税の義務が発生すること」にもなるため、税務的な手続きが必要になるのです。いきなり税金の話になってしまいましたが、税金は戻ってくる場合も多いので、しっかり頭に入れておくようにしましょう。
なお、開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」であり、新たに事業を開始したときのほか、事業を廃止したとき、または事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止する場合の必要書類でもあります。
開業届は納税地(住所地または事業所などの所在地)のある所轄の税務署に提出します。所轄の税務署は国税庁ホームページで確認してください。
国税庁ホームページ 税務署の所在地などを知りたい方
https://www.nta.go.jp/about/organization/access/map.htm
事業を開始した日から1ヵ月以内に提出してください。提出期限が土・日曜日・祝日の場合には、その翌日が期限ということになります。
以下の2つの方法があります。
マイナンバーカードの交付には自治体の役所における手続きが必要です。自治体のホームページなどでご確認ください。
「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーについて」の「開始届出書(個人の方用)新規」で手続きをしましょう。すぐに「利用者識別番号」と「暗証番号」が通知され、「e-Taxの開始(変更等)届出書」の提出ができます。
※これまでに医療費控除やふるさと納税の手続きなどでe-Taxを使ったことがある場合には、この手続きは不要です。
「e-Taxソフトのダウンロードコーナー」より、ソフトをダウンロードし、ご自身のパソコンにインストールしてください。「申告・申請等一覧」画面より、開業届を作成して送信します。詳しいデータ作成方法についてはこちらを参考にしてください。
※なお、インストール不要のWEB版では開業届の作成ができません(会計ソフトなどを利用して作成したイメージデータ/PDF形式の提出は可能です)。
書面は国税庁ホームページ「個人事業の開業・廃業等届出書(PDF/286KB)」からDLが可能です)。内容についてはデータで作成する際と同様ですので、e-Taxを利用する方も確認しておくとよいでしょう。記載例は以下の通りです。
引用:https://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/topics/teishutsu/pdf/02.pdf
個人事業主として一定の収入を得れば、確定申告が必要になります。確定申告には白色申告と青色申告がありますが、大きな節税効果を狙う場合には青色申告がおすすめです。
なお、一般的に「白色申告のほうが簡単」と言われますが、白色申告でも記帳と帳簿書類の保存は必要です。それに加え、事業におけるお金の動きを把握することの必要性を考えれば、あえて白色申告を選択するメリットはありません。先々のことを考え、最初から青色申告にチャレンジしてみるのもひとつの方法です。
青色申告のメリットについては「初めての確定申告!不安な方に基本から徹底解説します」をご一読ください。
所得税の青色申告承認申請書も、開業届と同様、e-Taxまたは書面での提出が可能です。細かな書き方については、下記記載例をご確認ください。
引用:https://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/topics/teishutsu/pdf/03.pdf
言ってしまえば「書類さえ出してしまえば個人事業主になれる」ということなのですが、問題はその後長く事業を継続できるかどうかということです。そのためには、ビジネスプランを明確にしておくこと、市場調査を怠らないこと、同業者間のコネクションをつくることなど、さまざまな視点がありますが、ここでは会計的な面で重要なことをピックアップしてみます。
・毎月どれくらいの所得が必要なのか、目標を明確にしておく
事業を維持する資金と生活費、それぞれをある程度算出し、目指す所得を決めておくことが重要です。「いくら稼げばいいのか」がわからなければ、どれほどの営業をすべきか、どの程度の作業量をこなすべきか、などの計算が非常に曖昧になってしまうおそれがあります。
・正確な所得を知るために「売上」と「経費」はこまめに会計ソフトに登録
早めに会計ソフトなどを導入し、売上と経費を登録しておきましょう。可能であれば月末ごとに決算するのがよいですが、忙しければ数ヶ月に1度でもかまいません。それでも正確な所得を知ることができますし、確定申告の時期が迫っても慌てずに済みます。
また、売上や経費を分析し、事業拡大や経費の節約などに役立てるようにしましょう。会計ソフトは、スマホでも簡単に、頻繁に登録できるものがおすすめです。
・どれくらいの税金が発生するのかを知り、節税対策も試してみる
事業の会計がしっかりできると、どれほどの税金が発生するのかも早い段階で把握できるようになります。すると、所得が多かった年には設備投資を行って経費を調整したり、iDeCoを含む小規模企業共済やふるさと納税などを活用し、控除額(課税される金額から差し引かれる額)を増やしたりして、計画的に節税をすることが可能です。開業してすぐは難しいかもしれませんが、ぜひ試してみてください。現金が手元に残れば、事業も進めやすくなります。
開業届の提出は、ビジネスを進めるうえでも非常に重要な手続きです。「開業届を出していない」という個人事業主もいますが、基本的には提出が義務付けられています。屋号付きの銀行口座を開設するときや政府に助成金を申請するときなど、開業届を出していなければできないこともあります。期限を過ぎてしまっている場合にも手続きを行うようにしてください。新たな事業を立ち上げたいと考えている方は、その第一歩として、しっかりと手続きしましょう。
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1980年鳥取県米子市生まれ。約8年の税理士事務所での勤務経験を経て、2019年東京都府中市で天野大税理士事務所を開業。雇わない・雇われない働き方「ひとり税理士」。 小規模法人やフリーランス・個人事業主の税務を得意とし「ビジネスを通して社会を元気にする」を理念にスモールビジネス専門の税理士として活動中。