消費税の割り戻し計算、積み上げ計算はどう違うの?

消費税の割り戻し計算、積み上げ計算はどう違うの?

みなさまもご存じの通り、2023年10月よりインボイス制度が開始されました。消費税の納税が開始されますが、その計算方法には「割り戻し計算方式」と「積み上げ計算方式」との2つがあり、どちらかを選ぶことが可能です。では、どちらを選ぶのが有利なのでしょうか。それぞれの計算方式についてご説明します。

1.インボイス制度により、消費税の計算方法を選べるように

冒頭でご説明したとおり、インボイス制度における消費税の計算方式は2つあります。これは制度開始に伴って改定されたものであり、インボイス制度が始まる前の消費税の計算方法は「割り戻し計算方式」に限定されていました。

インボイス制度導入の2023年10月1日以降、「積み上げ計算方式」という別の計算方式を選択できるようになり、課税業者はどちらの方式で計算するか考える必要がでてきたのです。できるだけ有利になるよう、それぞれの計算方式を理解しておきましょう。

2.「割り戻し計算方式」とは

まず、「割り戻し計算方式」についてご説明します。割り戻し計算方式とは、同じ税率で1年間の「税込みの金額」を合算し、その合計金額から最終的な消費税額を計算するという方法です。インボイス制度導入前は、この計算方式を原則としていました。

割り戻し計算方式の例
下記の3件の請求書について計算します。

                                                               
日付消費税率合計金額(税込)消費税額
10/18%軽減税率90円(税込)6円
10/28%軽減税率90円(税込)6円
10/38%軽減税率90円(税込)6円

税込み金額を合計する
90円+90円+90円=270円
税込み合計金額から、税抜きの計算を計算する
270円(税込)×100/108=250円(税抜)
税抜きの合計に消費税率を掛け、3つの請求書を合わせた消費税額を算出する
250円×8%軽減税率=20円

この3件の消費税を割り戻し計算で算出した場合の金額は、【20円】となります。

3.「積み上げ計算方式」とは

「積み上げ計算方式」とは、請求書に記載されている消費税額の額面をそのまま足していく、つまり「積み上げていく」という方法です。

積み上げ計算(積み上げ残)方式の例
先ほどと同じ、下記3件の請求書について計算し、結果を比較してみましょう。

                                                               
日付消費税率合計金額(税込)消費税額
10/18%軽減税率90円(税込)6円
10/28%軽減税率90円(税込)6円
10/38%軽減税率90円(税込)6円

それぞれの消費税額は「6円」となっているため、これを積み上げていきます。

6円+6円+6円=18円

この3件の諸費税を積み上げ計算方式で算出した場合の金額は、【18円】となります。割り戻し計算方式で算出するよりも、積み上げ計算方式で算出した消費税額のほうが小さくなるのです。

4.インボイス制度ではどちらを使う?

まず、最初にお話ししたように、インボイス制度においては「割り戻し計算方式」と「積み上げ計算方式」、どちらかを選ぶことができますが、「原則」としては下記のように定められています。

売上の消費税の計算方法の原則...割り戻し計算方式
仕入の消費税の計算方法...積み上げ計算方式

これらは原則であり、売上・仕入いずれも割り戻し計算方式で消費税計算をすることも可能です。ただし、売上の消費税計算に対して積み上げ計算方式を選択した場合、仕入の消費税計算も積み上げ計算方式を選ばなくてはなりません。

                             
売上に対する消費税額の計算方法仕入に対する消費税額の計算方法
積上げ計算積上げ計算のみ選択可
割戻し計算割戻し計算・積上げ計算のどちらも選択可

売上の消費税と仕入の消費税では、有利な計算方式が異なる

計算にはできるだけ有利な方式を選択したいものですが、売上の消費税と仕入の消費税では、有利な計算方式が異なるため注意が必要です。

売上...「消費税額が少なくなり、納税額が小さくなる」ため、積み上げ計算方式のほうが有利
仕入...「消費税額が増え、控除額が大きくなる」こととなり、割り戻し計算のほうが有利
(消費税額分は確定申告において控除されるため)

つまり、本来であれば、売上の消費税は積み上げ計算方式、仕入の消費税は割り戻し計算方式が有利ということになります(どちらも原則とは逆の計算方式となります)。ですが、先ほどご説明したように、売上の消費税計算に積み上げ計算方式を選択すると、仕入の消費税計算も積み上げ計算方式としなければなりません。

事業のスタイルによって計算方式を選ぶ

計算方式のどちらを選択するかは、業種、売上と仕入の方法など、事業のスタイルによって変わると考えましょう。

売上における消費税計算を有利にしたい...積み上げ計算方式を選択
仕入における消費税計算を有利にしたい...割り戻し計算方式を選択

これを頭に置いた上で、売上のインボイス発行が多いのか、あるいは仕入のインボイスの受領が多いのかを考えます。売上インボイスの発行回数の方が明らかに多いのであれば、消費税の端数が切り捨てられる回数も多くなるため、積み上げ計算のほうが有利になります。小売店や飲食店など細かくレシートを発行する業種であれば、積み上げ計算方式を検討してみる意味があると言えます。

まとめ

最終的にどちらの計算方式を選らんだほうが有利かについては、個人での判断が難しいものと言えます。また、これまで積み上げ計算方式は用いられていなかったため、対応できる計算ソフトなども選ぶ必要があります。さまざまなことを総合して考える必要があるため、可能な限り税理士に相談するようにしましょう。

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記事監修者紹介 久保佑紀先生久保佑紀税理士事務所 税理士
久保佑紀先生 久保佑紀税理士事務所

通信会社でシステムエンジニアとして働くが、結婚を機に退職。その後約10年間、中小企業の経理職や税理士事務所で働き、2023年に個人税理士事務所を立ち上げる。税務業務を中心にお客様のサポートをしながら、2 人の娘を育てるママ税理士。