消費税の計算方法には「原則課税」と「簡易課税」の2つがあります。
簡易課税制度とは、実際の仕入れや経費を細かく集計する代わりに、業種ごとに決められた割合(みなし仕入率)を使って消費税を計算できる制度です。経理負担を減らしやすい一方で、利用するには売上要件や事前の届出が必要です。
この記事では、簡易課税制度の仕組みや計算方法、原則課税との違いを、初心者向けにわかりやすく解説します。
▶︎この記事でわかること
|
目次
1.簡易課税制度とは?
簡易課税制度とは、「実際の仕入額」ではなく、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使って消費税を計算する方法です。
通常の消費税計算(原則課税)は、
(売上でもらった消費税) − (仕入や経費で払った消費税)
で計算します。
一方、簡易課税では、実際の仕入額を1件ずつ計算するのではなく、業種ごとの一定割合を使って、仕入額を概算して消費税を計算します。
2.原則課税との違い
| 項目 | 原則課税 | 簡易課税 |
| 仕入の計算 | 実際の金額 | みなし仕入率 |
| 計算の手間 | 多い | 少ない |
| 向いている人 | 仕入・設備投資が多い事業者 | 小規模事業者 |
| 消費税還付 | あり得る | 基本なし |
特に、仕入や経費が比較的少ないフリーランスや個人事業主では、経理負担を減らしやすいことから、簡易課税制度が選ばれるケースがあります。
では、実際にどのような条件で使えるのか見ていきましょう。
3.簡易課税制度を使える条件
簡易課税は、誰でも使えるわけではありません。
主な条件は次のとおりです。
- ・基準期間の課税売上高が5,000万円以下であること
- ・「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していること
ここでいう「基準期間」とは、原則として、
個人事業主:前々年
法人:前々事業年度
を指します。
4.消費税簡易課税制度選択届出書の提出方法
簡易課税制度を利用するには、事前に税務署へ「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
原則として、簡易課税を適用したい課税期間が始まる前日までに提出しなければなりません。期限を過ぎると、その課税期間は適用できない場合があるため注意しましょう。
提出方法は、主に次の3つです。
① e-Taxで提出する
国税庁のe-Taxを利用して、オンライン提出できます。
- ・税務署へ行かなくてよい
- ・スマホ・パソコンから提出できる
- ・控えをデータ保存しやすい
などのメリットがあります。
② 税務署へ持参する
書類を印刷し、管轄税務署へ直接提出する方法です。
初めてで不安な場合でも、窓口で提出しやすいでしょう。
③ 郵送で提出する
届出書を作成し、管轄税務署へ郵送することも可能です。
郵送の場合は、提出期限に間に合うよう余裕を持って送付しましょう。
「消費税簡易課税制度選択届出書」は、国税庁サイトからダウンロードできます。
国税庁|消費税簡易課税制度選択届出書ダウンロードページ
5.簡易課税制度の計算方法
簡易課税では、「売上にかかる消費税」に、業種ごとのみなし仕入率をかけて計算します。
イメージは次のとおりです。
(売上にかかる消費税)− (みなし仕入率で計算した仕入相当額)
(売上にかかる消費税)− ((売上にかかる消費税)×(みなし仕入率))
= 納付する消費税額
6.みなし仕入率とは?
みなし仕入率とは、その業種における仕入等の割合を、国が一定の基準として定めたものです。
主な区分は次のとおりです。
| 区分 | 主な業種 | みなし仕入率 |
| 第1種 | 卸売業 | 90% |
| 第2種 | 小売業 | 80% |
| 第3種 | 製造業など | 70% |
| 第4種 | 飲食店業など | 60% |
| 第5種 | サービス業など | 50% |
| 第6種 | 不動産業 | 40% |
※詳細な区分は国税庁「簡易課税制度の事業区分」をご確認ください。
7.計算例
たとえばサービス業で、
売上にかかる消費税:50万円
みなし仕入率:50%
の場合、
仕入相当額:50万円×50%=25万円 ・・・①
納付税額:50万円 – 25万円(①)=25万円
となります。
実際の経費ではなく、「業種ごとの割合」で計算する点が特徴です。
8.簡易課税制度のメリット
① 計算がシンプルになる
原則課税では、請求書や領収書ごとに消費税額を集計する必要があります。
一方、簡易課税では、みなし仕入率を使って計算するため、日々の経理負担を減らしやすくなります。
特に、
- ・1人で事業をしている
- ・経理に時間をかけにくい
- ・領収書整理が負担
といったフリーランスや個人事業主では、メリットを感じやすいでしょう。
② 納税額を把握しやすい
簡易課税は、売上をベースに計算するため、納税額のおおよその目安を把握しやすい特徴があります。
資金計画を立てやすくなる点もメリットの1つです。
③ 小規模事業と相性が良い
仕入や設備投資が比較的少ない事業では、簡易課税が有利になるケースがあります。
例えば、
- ・ライター
- ・デザイナー
- ・コンサルタント
- ・エンジニア
など、仕入が少ない業種で利用されることがあります。
9.簡易課税制度のデメリット・注意点
① 仕入や設備投資が多いと不利になる場合がある
原則課税では、実際に支払った消費税を差し引けます。
そのため、
- ・パソコン購入
- ・店舗設備導入
- ・大きな仕入
などが多い場合は、原則課税のほうが有利になるケースがあります。
② 消費税還付は基本的に受けにくい
原則課税では、条件によっては消費税還付を受けられる場合があります。
一方、簡易課税では、実際の仕入税額を使わないため、基本的に還付は想定されません。
③ 一度選択すると継続適用になる
簡易課税は、毎年自由に変更できるわけではありません。
一度「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すると、原則として最低2年間は継続適用となります。
そのため、「とりあえず簡易課税にする」のではなく、事業内容や今後の設備投資予定も踏まえて判断することが大切です。
10.インボイス制度との関係
インボイス制度の開始により、消費税申告のルールはこれまで以上に重要になっています。
その中で、
- ・簡易課税
- ・2割特例/3割特例
など、どの制度を選ぶかがポイントになります。
特に、インボイス登録をきっかけに免税事業者から課税事業者になった個人事業主やフリーランスでは、「できるだけ負担を抑えたい」「計算をシンプルにしたい」と考えるケースも少なくありません。
2割特例は、一定条件を満たす場合に、売上にかかる消費税額の2割を納税額とする特例です。なお、2割特例は一定期間の措置であり、個人事業者向けには令和9年分・令和10年分に「3割特例」が設けられています。
簡易課税と2割特例/3割特例では、適用条件や計算方法が異なるため、自分の事業規模や経費状況に合わせて比較検討することが大切です。
2割特例については、以下の記事で詳しく解説しています。
Finタメ・マガジン|インボイス制度の2割特例とは?適用条件や計算方法をわかりやすく解説
3割特例については、国税庁の「令和8年度税制改正特集」もご覧ください。
消費税申告や請求書管理の負担を減らすなら、アプリ活用もおすすめ
国税庁でも、消費税申告には帳簿や請求書等の保存が必要とされています。
簡易課税制度では、原則課税のようなインボイス保存要件はありませんが、請求書や領収書の保存は必要です。電子データは電子帳簿保存法の対象になる場合もあります。
最近は、スマホで請求書作成・管理まで完結できるアプリも増えています。
「請求書FinFin」は、インボイス制度や電子帳簿保存法に対応した請求書作成・管理アプリです。請求書管理の負担を減らしたい方は、こうしたツールの活用も検討してみるとよいでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q:簡易課税制度は誰でも使えますか?
A:いいえ。基準期間の課税売上高や届出状況など、一定条件を満たす必要があります。
Q:簡易課税と原則課税はどちらが得ですか?
A:一概には言えません。仕入が少ない事業は簡易課税、設備投資が多い事業は原則課税が有利になることがあります。
Q:簡易課税でもインボイス保存は必要ですか?
A:原則課税のような「インボイス保存による仕入税額控除」は必要ありません。ただし、帳簿や請求書等の保存は必要です。
Q:途中でやめることはできますか?
A:不適用届出書の提出が必要です。また、タイミングによってはすぐに変更できない場合があります。
まとめ(3行要約)
- ・簡易課税制度は、みなし仕入率を使って消費税を計算する制度です。
- ・利用するには、売上要件を満たし、事前に届出を行う必要があります。
- ・原則課税と比べて有利・不利が変わるため、事業内容に合わせた選択が重要です。
※本記事は令和8年時点の情報を前提に作成しています。税制は法改正により変更される可能性があるため、申告前は必ず国税庁・e-Tax等の最新情報をご確認ください。








