個人事業主の社会保険をわかりやすく解説|国民健康保険・国民年金と確定申告のポイント
個人事業主として開業すると、「社会保険はどうなるの?」「会社員のときと何が違うの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
個人事業主は、会社員向けの健康保険や厚生年金保険には加入しない代わりに、「国民健康保険」と「国民年金」に加入する義務があります。また、支払った保険料は確定申告で社会保険料控除の対象になるため、正しく申告することが大切です。
この記事では、個人事業主が加入する社会保険の種類や仕組み、確定申告との関係についてわかりやすく解説します。
| ▶︎この記事でわかること
・個人事業主が加入する社会保険の種類 |
目次
1. 個人事業主が加入する社会保険の種類
個人事業主は、会社員が加入する健康保険や厚生年金保険には加入せず、「国民健康保険」と「国民年金」に加入する義務があります。また、40歳以上になると介護保険料の負担も発生します。
まずは、それぞれの制度の概要を確認しておきましょう。
| 制度 | 主な目的 |
| 国民健康保険 | 病気やケガに備えるための医療保険 |
| 国民年金 | 老後や万が一の場合に備えるための年金制度 |
| 介護保険 | 介護が必要になった場合の支援制度 |
国民健康保険
国民健康保険は、個人事業主やフリーランス、自営業者などが加入する公的な医療保険制度です。他の医療保険制度(被用者保険、後期高齢者医療制度)に加入されていない全ての住民の方を対象としています。
病院やクリニックを受診した際に医療費の自己負担を軽減できるほか、高額療養費制度なども利用できます。
国民年金
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の方が加入する公的年金制度です。
老後に受け取る老齢基礎年金だけでなく、障害基礎年金や遺族基礎年金などの保障も含まれています。
介護保険
介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支えるための制度です。40歳以上になると介護保険の被保険者となり、国民健康保険料とあわせて介護保険料を納めることになります。
なお、保険料や加入条件は年齢や自治体によって異なる場合があります。
それでは、それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
2. 個人事業主が加入する国民健康保険とは
国民健康保険は、他の医療保険制度(被用者保険、後期高齢者医療制度)に加入されていない全ての住民の方を対象とした公的な医療保険制度です。
都道府県により運営されている公的な医療保険制度で、個人事業主やフリーランス、自営業者なども加入の対象となります。
病気やケガで病院を受診した際に医療費の一部を負担してもらえるほか、高額な医療費が発生した場合には高額療養費制度を利用できます。
会社員を退職して個人事業主になった場合は、原則として勤務先の健康保険を脱退し、国民健康保険へ加入することになります。
国民健康保険料は前年の所得などをもとに決まる
国民健康保険料は全国一律ではなく、自治体ごとに計算方法や保険料率が異なります。
一般的には、次のような要素をもとに計算されます。
- ・前年の所得
- ・加入者数
- ・世帯構成
- ・自治体ごとの保険料率
そのため、同じ所得でも住んでいる自治体によって保険料が異なる場合があります。
また、開業初年度は前年の事業所得がないため保険料が低くなるケースもありますが、会社員時代の給与所得などが反映されることもあるため注意が必要です。
国民健康保険には扶養制度がない
会社員が加入する健康保険には扶養制度がありますが、国民健康保険には原則として扶養という考え方がありません。
そのため、配偶者や子どもがいる場合も、それぞれが国民健康保険の加入者として扱われます。
独立後に保険料が想定より高く感じるケースもあるため、事前に自治体の保険料シミュレーションなどで確認しておくと安心です。
配偶者が会社勤めで健康保険に加入している場合は、配偶者の扶養に入るという選択肢もあります。この場合、年収130万円未満などの条件がありますのでよく確認しましょう。
退職後は「任意継続」という選択肢もある
会社を退職したあと、すぐに国民健康保険へ加入する以外に、勤務先の健康保険を一定期間継続できる「任意継続被保険者制度」を利用できる場合があります
家族構成や収入によっては、国民健康保険よりも保険料負担が少なくなるケースもあります。退職直後は国民健康保険と任意継続の両方を比較し、自分に合った制度を選ぶとよいでしょう。
注意:保険料を滞納すると給付に影響する場合がある
国民健康保険料を滞納すると、督促や延滞金が発生する場合があります。
また、滞納期間が長期に及ぶと、通常の保険証が交付されないなどの措置が取られるケースもあります。
保険料の支払いが難しい場合は、早めに自治体の窓口へ相談しましょう。
3. 個人事業主が加入する国民年金とは
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の方が加入することが義務付けられている公的年金制度です。
個人事業主は原則として「国民年金第1号被保険者」となり、毎月保険料を納めます。
年金というと老後のための制度というイメージがありますが、実際には老後だけでなく、病気や事故などで障害を負った場合や、加入者が亡くなった場合の保障も含まれています。
国民年金で受けられる主な保障
国民年金に加入することで、主に次の給付を受けられます。
- 老齢基礎年金:原則として65歳から受け取れる年金
- 障害基礎年金:病気やケガによって一定以上の障害状態になった場合に受け取れる年金
- 遺族基礎年金:国民年金の加入者などが亡くなったときに、一定の要件を満たす遺族が受け取れる年金
そのため、国民年金は将来の年金を受け取るためだけではなく、万が一のリスクに備える制度としても重要な役割を担っています。
国民年金保険料は毎年度見直される
国民年金保険料は毎年度見直されるため、金額は年度によって異なります。
最新の保険料額は、日本年金機構の公式サイトで確認しましょう。
また、所得が少ない場合や経済的な事情がある場合には、保険料の免除制度や納付猶予制度を利用できることがあります。
国民年金保険料は社会保険料控除の対象
支払った国民年金保険料は、確定申告で社会保険料控除の対象になります。
本人分だけでなく、生計を一にする配偶者や親族の国民年金保険料を支払った場合も、一定の要件を満たせば控除を受けられる場合があります。
なお、国民年金保険料を申告する際には、日本年金機構から送付される控除証明書が必要になるため、大切に保管しておきましょう。
控除証明書についてはこちらを参考にしてください。
日本年金機構|令和7年分社会保険料(国民年金保険料)控除証明書の発行について
注意:保険料の未納は将来の年金額に影響する
国民年金保険料を未納のままにすると、将来受け取れる老齢基礎年金が減額される場合があります。また、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取るための要件を満たせなくなる可能性もあります。保険料の納付が難しい場合は、未納のまま放置せず、免除制度や納付猶予制度の利用を検討しましょう。
4. 40歳以上は介護保険料も負担する
40歳以上になると、国民健康保険料とあわせて介護保険料も納めることになります。介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支えるための公的な制度です。介護が必要と認定された場合に、介護サービスを1〜3割の自己負担で利用できます。
介護保険料は国民健康保険料とあわせて納付する
40歳以上65歳未満の方は、介護保険料を国民健康保険料に上乗せする形で納付します。そのため、40歳になると国民健康保険料が増えたように感じることがあります。
介護保険料も社会保険料控除の対象
国民健康保険料に含まれる介護保険料は、社会保険料控除の対象です。国民健康保険料や国民年金保険料と同様に、確定申告で申告することで所得控除を受けられる可能性があります。
支払った保険料は、確定申告の際に忘れずに確認しておきましょう。
5. 個人事業主が支払う社会保険料は確定申告で控除できる
前に述べた通り、個人事業主が支払った国民健康保険料や国民年金保険料、介護保険料は、確定申告で「社会保険料控除」を受けることができます。社会保険料控除を活用すると課税所得を減らせるため、所得税や住民税の負担軽減につなげることができます。
社会保険料控除とは
社会保険料控除とは、納税者が支払った社会保険料を所得から差し引くことができる所得控除のひとつです。1年間(1月1日〜12月31日)に実際に支払った社会保険料が控除の対象になります。
控除対象となる主な社会保険料
個人事業主の場合、主に次のような保険料が社会保険料控除の対象になります。
- ・国民健康保険料
- ・国民年金保険料
- ・介護保険料
- ・国民年金基金の掛金
また、生計を一にする配偶者や親族の社会保険料を本人が支払った場合は、その保険料についても控除を受けられる場合があります。
確定申告で申告する方法
社会保険料控除を受けるためには、確定申告書の「社会保険料控除」欄に支払った金額を記載します。入力する主な内容は次のとおりです。
| 保険の種類 | 入力する内容 | 確認する主な書類 |
| 国民健康保険 | 1年間で支払った保険料の合計額 | 自治体から送付される納付済額のお知らせ、納付額確認書、口座振替の通帳・利用明細など |
| 国民年金 | 1年間で支払った保険料の合計額 | 日本年金機構から送付される「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」 |
| 介護保険 | 1年間で支払った介護保険料の合計額 | 自治体から送付される介護保険料納付済額通知書など(国民健康保険料に含まれている場合は納付額のお知らせ等) |
保険料の支払い額が分からない場合は、自治体から送付される納付済額のお知らせや口座引落履歴などを確認しましょう。
国民年金は控除証明書が必要
国民年金保険料を社会保険料控除として申告する場合は、日本年金機構から送付される「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が必要です。
確定申告まで大切に保管しておきましょう。
一方、国民健康保険料については、自治体から送付される納付済額通知書などで支払額を確認できます。
注意:社会保険料は経費ではなく所得控除
個人事業主の国民健康保険料や国民年金保険料は、事業の必要経費にはなりません。一方で、確定申告では社会保険料控除として所得から差し引くことができます。
「経費ではないから申告しなくてよい」「経費と控除のどちらにも含められる」と勘違いしやすいポイントなので注意しましょう。
支払った社会保険料を正しく申告することで、税負担を抑えられる可能性があります。
社会保険控除の申告方法については以下の記事で詳しく解説しています。
Finタメ・マガジン|【フリーランス/個人事業主&副業をしている会社員に対応】社会保険・国民健康保険の控除はどう申告する?確定申告徹底解説
社会保険料控除の申告もスマホでかんたん
国民健康保険料や国民年金保険料を支払った場合は、確定申告で社会保険料控除を受けられます。
「社会保険料控除の入力方法がわからない」
「確定申告が初めてで不安」
という方は、スマホで申告できる「確定申告FinFin」の活用もおすすめです。
質問に答えながら入力を進められるため、確定申告が初めての方でも手続きを進めやすく、e-Taxにも対応しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 個人事業主は社会保険に加入しなくてもよいですか?
いいえ。個人事業主は原則として国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。加入手続きは市区町村や年金事務所などで行います。
Q. 国民健康保険料は経費になりますか?
国民健康保険料は必要経費にはなりません。ただし、確定申告では社会保険料控除として所得から差し引くことができます。
Q. 国民年金保険料は全額控除できますか?
その年に支払った国民年金保険料は、原則として社会保険料控除の対象になります。確定申告の際は、日本年金機構から送付される控除証明書をもとに申告しましょう。
Q. 介護保険料も社会保険料控除の対象ですか?
はい。支払った介護保険料は社会保険料控除の対象です。国民健康保険料に含まれている場合もあるため、納付額の通知書などを確認しましょう。
Q. 社会保険料控除を受けると税金は安くなりますか?
社会保険料控除を受けることで課税所得が減るため、所得税や住民税の負担軽減につながる可能性があります。
まとめ(3行要約)
- ・個人事業主は原則として国民健康保険と国民年金に加入し、40歳以上は介護保険料も負担します。
- ・支払った国民健康保険料や国民年金保険料、介護保険料は社会保険料控除の対象です。
- ・社会保険料は経費にはなりませんが、確定申告で申告することで税負担の軽減に繋がります。
※本記事は執筆時点の法令・制度をもとに作成しています。社会保険制度や保険料、控除制度は法改正等により変更される場合があります。最新情報は国税庁、日本年金機構、各自治体の公式サイトをご確認ください。








