扶養内でパートやアルバイトで働く方は、103万や130万といった年収の壁を気にされている方も多いかと思います。ここでは、扶養制度の基本や、それぞれの年収の壁の意味合いを解説いたします。働き方や生活に密接に関わる考え方になりますので、しっかり理解しておきましょう。
▶︎この記事でわかること
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1. 年収の壁とは?
年収の壁とは、一定の収入額を超えることで、所得税や住民税が発生したり、社会保険料の負担が生じたりする基準のことです。代表的なものに103万円・106万円・130万円・150万円の壁があり、それぞれ税制上の扶養や社会保険上の扶養に関係しています。
ただし、年収の壁を超えたからといって必ずしも損をするわけではありません。社会保険に加入することで将来の年金額が増えたり、傷病手当金などの保障を受けられたりする場合もあります。制度の仕組みを理解し、自分に合った働き方を選ぶことが大切です。
2. 扶養制度の基本
扶養とは、収入が十分でない家族を、収入のある家族が生活面でサポートする制度です。具体的には、扶養をする側(扶養者)と扶養される側(被扶養者)に分かれ、税制上や社会保険上で一定の優遇措置が設けられています。
扶養には「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があり、それぞれ異なる基準が設定されています。税制上の扶養では、扶養者の所得税や住民税が軽減され、社会保険上の扶養では、扶養者の勤務先の健康保険や特別な国民年金制度に加入できるメリットがあります。以下では、この2つの制度について、それぞれの特徴と仕組みを詳しく解説していきます。
税制上の扶養制度
税制上の扶養は、一般的に「103万円の壁」と呼ばれるもので「扶養者の税負担を軽減する制度」です。税制上の扶養の対象となる要件は以下となります。
・納税者と生計が同一の親族であること(一緒に生活している、仕送りをもらっているなど)
・年間所得金額の合計が48万円以下であること(給与所得者の場合は、年収103万円以下)
・納税者が勤務先の年末調整において「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出すること
この制度では被扶養者が税制上の扶養の範囲内(年収103万円)で働くことで、以下のような恩恵を受けることができます。
・被扶養者本人に所得税の納税額が生じない(確定申告の手続きが不要)
・扶養者である納税者が「扶養控除」を受けることができる
・扶養者である納税者が「配偶者控除」を受けることができる
社会保険上の扶養制度
社会保険上の扶養は、「健康保険や厚生年金に関わる制度」です。扶養者の収入で被扶養者の社会保障を支える仕組みです。一般的には「106万の壁」「130万の壁」と呼ばれており、基準の年収を超えると社会保険料等の支払義務が生じます。
この制度では、被扶養者は扶養者の勤務先の健康保険に加入でき、医療費の自己負担を3割に抑えることができます。また、高額療養費制度の利用も可能となり、医療費負担の軽減につながります。
3. 年収の壁とは?
パートやアルバイトで働く際に重要となるのが「年収の壁」という考え方です。これは、一定の年収を超えると税制や社会保険の面で様々な優遇措置が受けられなくなる基準のことを指します。
一般的に「103万円の壁」や「130万円の壁」と呼ばれるこれらの基準は、扶養から外れるかどうかを規定するラインとなっています。より経済的に働くためには、これらの壁について正しく理解しておく必要があります。以下では、2024年現在の主要な4つの年収の壁について、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
103万円の壁
ご自身の年収が103万円未満である場合、税制上の恩恵を受けることができます。
・被扶養者自身に納めるべき所得税が発生しない
年収が103万円を超えると、自身に所得税が発生し、税制上の扶養から外れることになります。103万円とは、基礎控除38万円と給与所得控除55万円の総額です。そのため、パートやアルバイトをしていて、年収が103万を超えない場合は、所得税の支払いは発生しません。
※学生の場合は、「勤労学生控除」という制度があり、年収130万円までは所得税が発生しません。
・税制上の扶養となり、扶養者が控除を受けられる
| 扶養控除 | 被扶養者が配偶者以外 |
| 配偶者控除 | 被扶養者が配偶者 |
ご自身の年収が103万円未満であり、かつ親や配偶者の扶養に入っていることで、扶養者の所得税や住民税の納税額において以下のような恩恵を受けることが可能です。
106万円の壁
社会保険に関する最初の壁です。
約106万円(8.8万円/月)以内であれば、扶養者の社会保険に加入することができますが、これを超えると自身の勤務先の社会保険に加入する義務が生じる可能性が発生します。
義務が生じるのは、以下の5つの条件を満たした場合、あるいは、正社員の3/4以上の勤務日数・時間がある場合となります。
・賃金が8.8万円以上/月であること
・所定労働時間が20時間以上/週であること
・雇用期間が2ヶ月を超える見込みであること
・本業勤務先の従業員数が51人以上であること(※2024年10月に改正)
・学生ではないこと
130万円の壁(学生)
「103万円の壁」でも触れましたが、学生の場合、基礎控除(38万円)、給与所得控除の最低額(55万円)の総額103万円に加えて、勤労学生控除(27万円)が適用されるため、130万円を超えると、自身で国民年金や国民健康保険に加入する必要が生じます。
学生アルバイトと社会保険加入の詳細については、以下の記事をご参考ください。
150万円の壁
150万円の壁は、配偶者特別控除の満額ラインです。配偶者特別控除額は、年収150万円を境に、段階的に減少していきます。控除額は最大38万円で、配偶者の年収が201.6万円を超えると受けられなくなります。
配偶者控除と同様に、控除を受ける納税者本人の年収金額が1,195万円を超えれば、配偶者特別控除を受けることはできません。
| 配偶者(被扶養者)の年収 | 納税者本人(扶養者)の年収 | ||
| 1,095万円以下 | 1,095万円超1,145万円以下 | 1,145超1,195万円以下 | |
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103万円超150万円以下 |
38万円 |
26万円 |
13万円 |
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150万円超155万円以下 |
36万円 |
24万円 |
12万円 |
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155万円超160万円以下 |
31万円 |
21万円 |
11万円 |
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160万円超166.8万円未満 |
26万円 |
18万円 |
9万円 |
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166.8万円以上175.2万円未満 |
21万円 |
14万円 |
7万円 |
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175.2万円以上183.2万円未満 |
16万円 |
11万円 |
6万円 |
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183.2万円以上190.4万円未満 |
11万円 |
8万円 |
4万円 |
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190.4万円以上197.2万円未満 |
6万円 |
4万円 |
2万円 |
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197.2万円以上201.6万円未満 |
3万円 |
2万円 |
1万円 |
※年収の壁で基準となっている金額は、「年収(額面)」であり、「手取り額」ではありませんので、ご注意ください。
4. 扶養内で働くときの3つの注意点
年収の壁を意識して働く際には、いくつかの重要な注意点があります。収入の計算方法や交通費の扱い、さらには制度の変更など、見落としがちですが、影響の大きい要素について理解しておく必要があります。以下では、扶養内で働く際に特に注意すべき3つのポイントを解説します。
複数の仕事をしている場合
複数の場所で働いている場合、すべての収入を合算して年収が計算されます。
103万円以下に抑えたい場合、月収の目安は、約8.5万円となります。また、年末調整は、「主たる勤務先」の1社でしか受けられませんので、それ以外の給与については、確定申告をする必要があります。
交通費の扱い
通勤交通費は基本的に非課税のため、税制上の年収には含まれませんが、社会保険上の年収には含まれます。特に、扶養の範囲内でギリギリまで働きたい場合は、この違いに特に注意が必要です。
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扶養の範囲内で働くか迷ったときは、まず自分の収入状況を正しく把握することが大切です。特にスキマバイトや複数のアルバイトをしている場合は、収入の合計額が見えにくくなりがちです。
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よくある質問(FAQ)
Q:扶養に入っていると確定申告は不要ですか?
A:扶養に入っていても、必ずしも確定申告が不要とは限りません。複数の勤務先から給与を受け取っている場合や、副業収入がある場合などは確定申告が必要になることがあります。扶養の有無と確定申告の要否は別の制度として判断されます。
Q:年収の壁の判定は手取り額ですか?
A:いいえ。年収の壁で判定される金額は、一般的に税金や社会保険料が差し引かれる前の「額面収入」です。手取り額ではないため、実際の受取金額と混同しないよう注意しましょう。
Q:パートとアルバイトを掛け持ちしている場合、年収はどう計算しますか?
A:複数の勤務先で得た給与収入はすべて合算して判定します。たとえば2つのアルバイト先でそれぞれ50万円ずつ収入がある場合、年収は合計100万円となります。扶養や税金の判定も合計額で行われます。
Q:年の途中で年収の壁を超えそうな場合はどうすればよいですか?
A:まずは現在の収入額と今後の勤務予定を確認しましょう。扶養の範囲内で働きたい場合は勤務時間やシフトの調整を検討する方法があります。一方で、長期的な収入増加を目指す場合は、扶養を外れて働く選択肢もあります。
Q:年収103万円を少し超えただけでも大きく損をしますか?
A:103万円を超えたからといって、超えた金額以上の税金がかかるわけではありません。所得税は超えた部分に応じて計算されるため、急に手取りが大幅に減るわけではありません。ただし、扶養控除や配偶者控除への影響は別途確認が必要です。
Q:社会保険に加入するとどのようなメリットがありますか?
A:社会保険に加入すると健康保険や厚生年金の保障を受けられます。病気やけがで働けなくなった場合の傷病手当金や、将来受け取る年金額の増加などのメリットがあります。保険料負担だけでなく保障面も含めて検討しましょう。
Q:扶養を外れた場合、住民税はいつから増えますか?
A:扶養を外れたことによる住民税への影響は、一般的に翌年度の住民税から反映されます。住民税は前年の所得をもとに計算されるため、今年の収入が増えて扶養から外れた場合、その影響は翌年6月頃から課税される住民税に反映されるのが通常です。なお、実際の税額は所得額や自治体によって異なります。
まとめ(3行要約)
・年収の壁には103万円・106万円・130万円・150万円などがあり、税金や社会保険に影響します。
・扶養には「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」があり、それぞれ基準が異なります。
・扶養内にこだわるだけでなく、将来の保障や収入も踏まえて働き方を選ぶことが大切です。
記事監修者紹介
公共政策G
サービスリーガルエキスパートチームTL
税理士
渡邊 亮先生
大学卒業後に4大税理士法人に入所。大手日系企業や外資系企業を中心に税務申告業務及び税務相談業務に従事。その後M&A部門に異動し、上場企業やファンド等を対象にM&A関連業務及びクロスボーダー取引等に関する税務アドバイザリー業務を担当。 2023年8月よりタイミーに参画し、新しい働き方における税制面の課題解決に向けて日々調査研究を行っている。








