【扶養に入っている学生向け】
バイトでいくら稼いだら確定申告が必要?申告ラインを解説

学業のかたわら、アルバイトをしている大学生は多いと思います。そんな大学生の皆さんは、「確定申告」についてどれくらい理解しているでしょうか。「自分に関係あるかどうかわからない……」と不安に思っていませんか? 実は、学生でも条件によっては確定申告が必要な場合があります。とくに家族の扶養に入っている学生は、そのしくみを知っておくと安心できます。
そこでこの記事では、学生さんに向けて確定申告の基本や申告ライン、申告しなかったときのリスク、「申告すると得する場合」があることまで、わかりやすく解説します。少しでも確定申告や税金に対する理解を深め、不安な気持ちをなくしていきましょう。
※この記事は「令和7年(2025年)の税制改正」に対応しています。
目次
1.確定申告とは?
「確定申告」とは、年間の所得(収入から必要経費を引いた金額)を税務署に報告し、1年間の納税額を確定させる手続きです。会社員の場合は勤め先で年末調整が行われるため、通常は自分で確定申告をする必要はありません。
※副業をしている場合は確定申告が必要です。会社員の確定申告についてはこちら。
しかし、学生アルバイトの場合でも、勤め先で年末調整を受けていない場合には、確定申告をする必要があります。「勝手に計算してもらえるのでは?」と思うかもしれませんが、現在のところ、日本には(世界にも)それほど完成度の高いしくみは存在していないのです。
「毎月もらう給料から税金が引かれているけれど?」と思われるかもしれません。これは「源泉徴収」といって、会社があらかじめ税金分を差し引いて支払うしくみです。ただし、その金額は「ざっくり多めに」になっており、年末には本当の納税額を計算し直す必要があります。これが確定申告が必要な理由です。
2.収入・所得・控除の違いと「勤労学生控除」とは?
さて、ここからの文章がより理解しやすくなるよう、次のことを覚えておきましょう。例えば、「収入」と「所得」は似ている言葉ですが、違うものだと理解しておくだけでも税金の理解が深まります。
■収入
収入とは、働いて得たお金の総額のことで、つまり「もらったお金の合計金額そのまま」です。たとえば、アルバイト先からもらう給料の合計金額がこれに当たります。収入は給与明細に記載されている「支払金額」や「給与額」としてイメージするとわかりやすいでしょう。
■所得
所得とは、収入から仕事をする上でかかった必要な費用や、経費が発生しない会社員やアルバイトの場合には「給与所得控除」などの所定の控除額を差し引いた後の金額のことです。この所得が実際に税金を計算する基準となります。
■控除
「控除」とは、もらったお金(収入や所得)から「あらかじめ決められた分」を差し引いて税金を計算するしくみです。控除があると、そのぶん納める税金も少なくなります。
たとえば、給与収入から支払う税金も、給与そのままの金額に税率をかけて計算されているわけでなく、「基礎控除」や「給与所得控除」などが差し引かれてからの計算となります。
■勤労学生控除のポイント
「勤労学生控除」は、学生アルバイトへの特例です。給与所得控除65万円と基礎控除58万円に加え、合計所得が85万円以下(給与のみなら収入150万円以下)であれば、所得税がかかりません。
勤労学生控除については、勤務先で「勤労学生」であることを年末調整のときに申告します。複数のアルバイトをしていたり、年末調整が実施されない勤務先であったりする場合は、自分で確定申告を行う必要があります。確定申告の必要性については、のちほど詳しくご説明します。
3.学生アルバイトと社会保険(健康保険・年金)の加入ライン
合計所得が85万円(給与のみなら収入150万円)以下であれば所得税がかからないものの、社会保険(健康保険・厚生年金)については別の基準で加入義務が発生する場合があります。一般的な昼間学生は社会保険(健康保険・厚生年金)の「適用除外」となり加入義務はありませんが、以下の条件を満たすと加入義務が発生します。
・週20時間以上かつ月収8万8千円以上(年収約106万円以上)※2026年10月撤廃予定
・2か月を超える雇用の見込みがある
・従業員51人以上の企業で働く場合(2024年10月改正により101人以上から変更)
また、夜間・定時制・通信制の学生や休学中の者は昼間学生の適用除外に該当せず、上記条件を満たせば社会保険加入義務が生じます。
さらに、年収が130万円を超えると親の健康保険の扶養から外れるため、自分で健康保険に加入する必要があります。「106万円の壁」(社会保険加入)と「130万円の壁」(扶養から外れる)は基準が異なるため、注意が必要です。
4.扶養にかかわる「特定親族特別控除」
まず、学生の場合は「親の扶養に入っているかどうか」も重要なポイントです。2025(令和7)年度の年度税制改正で、あらたに「特定親族特別控除」という制度が創設されました。
特定親族とは、「居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族」であり、まさにこの記事の「アルバイトをする大学生」に相当する皆さんのことを言います。また、「合計所得金額が58万円を超え、123万円以下の人」という所得の条件がつきます。
先ほど触れたように、アルバイトで受け取るお金は「収入」であり、「所得」とは異なります。所得58万円から123万円以下というのは、アルバイト収入として受け取った金額の123万円から188万円までにあたります。特定親族特別控除は、「所得58万円から123万円以下(収入123万円から188万円以下)の場合、段階的に親の所得から控除される金額が変わっていく制度です。
年収(給与収入のみ) | 親の控除額 | 内容説明 |
〜123万円 | 63万円(満額控除) | 特定扶養控除 |
123万円超〜188万円 | 63万円→3万円(段階減額) | 控除額が年収に応じて減少 |
188万円超 | 0円(控除なし) | 扶養から外れる |
参考:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025004-025.pdf#page=2
19歳~22歳の学生が親の扶養から完全に外れる基準は「給与収入188万円超」となります。また、それ以下の金額でも控除額は減っていきます。「子どもの収入が増えても、家族全体で見れば税負担が重くなる」という状況にもなり得るため、ご家族内に相談するようにしましょう。
5.勤労学生控除と、確定申告が不要になるライン
給与収入のみの「年収150万円以下」で、ほかの所得がなければ「勤労学生控除」「基礎控除」「給与所得控除」によって自分自身の所得税は基本的に発生しません。ただし、「扶養」と「確定申告の必要性」はそれぞれ異なる制度に基づいているため、区別して考えなければなりません。「親の扶養」と「自分に税金がかかるか」「申告が必要か」の基準は異なります。
6.確定申告が必要なケース
では、どういったケースで確定申告が必要になるか見てみましょう。
・アルバイトの給与収入が150万円を超える場合(勤労学生控除が使えなくなるライン)
・親の扶養から外れる収入(収入188万円超)を得た場合
・複数のバイト先があり、いずれも年末調整を受けていない場合
・医療費控除や寄附金控除を受けたい場合
・源泉徴収された税金を還付申告したい場合(年収が控除枠内でも可能)
「住民税」については地域差があり、一般に給与収入110万円以下は非課税自治体が多いですが、個別の証明で申告を求められることがあります。なお、所得税の確定申告をした場合は、住民税の手続きも自動的に完了します。
7.確定申告をする大きなメリットは「税金が戻ってくること」
面倒で、税金も納めなくてはならなくて……と、あまりよい印象を持たれない確定申告ですが、確定申告は必ずしも税金を納めるためだけに行うものではありません。学生アルバイトの場合、払いすぎた税金を還付してもらえることも多く、場合によっては「お得になる手続き」でもあります。
一方で、収入が確定申告の必要条件を超えているのに申告しなかった場合、延滞税や加算税が課される場合があります(追徴課税)。また、「申告しなければいけない」とわかっていたのに確定申告と納税をしなかった場合には、さらに重いペナルティになる場合もあります。
「言わなければバレないのでは」と思われるかもしれませんが、お金の流れはさまざまな方法で把握できるものだということを忘れないようにしましょう。
8.学生の場合、確定申告に向けてこれからどう動けばいい?
では、学生の場合には、どう行動していけばいいでしょうか。確定申告の具体的なやり方と次のステップについてまとめました。
1.自分の収入を確認してみる
複数の勤め先がある場合には、収入の合算が必要です。ただし、確定申告で申告するのは、その年の1月1日から12月31日までの収入となりますので、その期間が過ぎてみなければ正確な金額はわかりません。確認したいのが年の途中である場合、前年度の収入を参考にしたり、自分自身が稼ぎたい金額、働きたい時間などから算出してみましょう。
2.自分が扶養されている状況を家族に確認する
扶養の状況や、場合によっては扶養を外れるかもしれないことに関し、家族に相談してみましょう。扶養を外れるのを避けたいという場合には、収入を調整する必要があります。
3.確定申告が必要かどうか、①と②を鑑みて判断する
確定申告の概要は以下の通りです。
・申告期間は毎年2月16日から3月15日まで(休日の場合は翌日)
・申告先は居住地を管轄する税務署
・申告書は国税庁のホームページや税務署で入手可能で、オンライン申告(e-Tax)も利用できる
9.スマホアプリの活用がおすすめ
「とはいえ、自分の収入の確認方法もいまいちわからない」という方は、アプリの活用がおすすめです。FinFinの「確定申告 for スキマバイト」であれば、スマホで源泉徴収票を撮影して読み込むだけで、確定申告が必要かどうかを判断することができます。複数存在する「年収の壁」のうち、自分が関係するのはどの壁なのかもわかります(ここまでは無料プランでも可能です)。
もちろん、ほかにも役立つ会計アプリはたくさんあります。いろいろと見て、ご自身に合ったものを検討してみてください。
おわりに
学生さんのアルバイト収入も、年収や所得額によっては確定申告が必要です。最新税制では収入基準や控除ルールが大きく変わっており、注意を払う必要があります。「勤労学生控除」や「親の扶養判定(特定親族特別控除)」などのしくみは複雑に思われるかもしれませんが、アプリを活用したり、国税庁の公式サイトや税務署の相談窓口でサポートを受けながら進めていきましょう。
記事監修者紹介

天野大 先生 天野大税理士事務所
1980年鳥取県米子市生まれ。約8年の税理士事務所での勤務経験を経て、2019年東京都府中市で天野大税理士事務所を開業。雇わない・雇われない働き方「ひとり税理士」。 小規模法人やフリーランス・個人事業主の税務を得意とし「ビジネスを通して社会を元気にする」を理念にスモールビジネス専門の税理士として活動中。