【確定申告の修正】訂正申告・修正申告・更正の請求のやり方と注意点

「e-taxで確定申告をしたけれど、間違いがあることにあとから気付いた……!」
初めて確定申告をする方や、まだ数回しか確定申告をしたことがないという方にはよくあるこんなシーン。インターネットや会計ソフトの案内、YouTubeなどを参考に確定申告を学ぶフリーランス・個人事業主は多く、間違いが起こるのはしかたのないことです。
そもそも、確定申告は個人がそれぞれに行うもの。ミスは頻繁に起こり、税務署もそのことをよく理解しています。「大変なことをしてしまった!バレたら罰金?」と恐れる必要もありません。確定申告のミスは修正できますし、ミスはミスだとわかるほうが今後の対策に繋がります。これを機会に確定申告のミスを修正する方法を把握しておきましょう。
この記事では、確定申告のミスに気付いた場合の修正方法について詳しく解説します。
目次
1.確定申告期限内なら何度でも「訂正申告」が可能
まず、ミスに気付いたのが「その年の確定申告の期限内」であれば、正しい内容に修正し、何度でも申告し直すことが可能です。確定申告のデータは「最新かつ最終」のデータが採用されるからです。これを「訂正申告」と呼びます。
なお、申告期限を1秒でも過ぎてしまうと、訂正申告ができません。その場合には「修正申告」あるいは「更正の請求」、いずれかの手続きが必要になります。本番が終わると冷静になり、間違いに気付く……というのはなにごとも同じです。余裕を持って期限よりも前に申告しておくようにしましょう。
2.期限後の修正には、「修正申告」と「更正の請求」がある
確定申告の期限を過ぎてしまった場合には、ケースによって「修正申告」と「更正の請求」のいずれかを行います。
内容 | 修正申告 | 更正の請求 |
該当するケース | 税金を少なく申告していた 還付金を多く申告していた |
税金を多く申告していた 還付金を少なく申告していた |
目的 | 税額を増やして申告し直す | 税額を減らす請求を行う |
効果 | 追加納税が発生する | 税金の還付・減額請求ができる |
手続き方法 | 申告書を修正して提出 | 更正の請求書を税務署に提出 |
提出期限 | 原則として期限なし | 原則として5年以内 |
では、それぞれを詳しくご説明します。
(1)修正申告
課税される所得や税金を「少なく」申告していた、または「還付金を多く」申告してしまったときに行う手続きです。「売上の計上漏れがあった」などの場合が該当します。この申告により、追加で納める税金が発生します。
■修正申告が必要になるケース
1.収入に計上漏れがあった(確定申告で申告を忘れた収入があった場合など)
2.経費を実際よりも多く計上した(実際には支払っていない経費を計上していた場合、事業とは無関係な支出を経費として含めていた場合など)
3.所得控除に誤りがあった(適用されない所得控除を入力していた場合、控除額を誤って多く計算していた場合など)
4.青色申告特別控除に関する誤りがあった(青色申告特別控除の適用要件を満たしていないのに適用していた場合、誤って控除額を多く入力していた場合など)
その他、税金の税率や控除額に誤りがある場合や、税務署からの指摘があった場合なども修正申告が必要になることがあります。
■修正申告の期限
修正申告明確な期限はなく、必要なことがわかったら、できるだけ早く行う必要があります。
(2)更正の請求
課税される所得や税金を「多く」申告していた場合、または「還付金を少なく」申告してしまったときに使う手続きです。「経費の漏れや控除の漏れがあった」などがこれに該当します。この申告により、納めすぎた税金や、不足していた還付金を請求することができます。のちほど詳しく説明しますが、この手続きには「更正の請求書」への記入と提出が必要です。
■更正の請求が必要になるケース
① 収入を多く計上してしまった(同じ収入を二重に計上していた場合、売上の金額を間違えていた場合など)
② 経費の計上漏れがあった(計上しきれていない経費があった場合、売上原価に計算ミスがあった場合など)
③ 所得控除の適用漏れがあった(本来は適用されるべき所得控除を入力していなかった場合、控除額を誤って少なく計算していた場合など)
④ 青色申告特別控除に関する誤りがあった(青色申告特別控除の適用要件を満たしているのに適用していなかった場合、誤って控除額を少なく入力していた場合など)
修正申告と同様、上記以外にも税金の税率や控除額に誤りがある場合なども該当します。
会計ソフトや会計アプリ、確定申告コーナーを利用して確定申告書を作成している場合、計算間違いによるミスは非常に発生しにくいものです。しかし、個人による「入力ミス」や「選択ミス」は発生しやすいため、十分注意してください。
■更正の請求の期限
更正の請求は、法定申告期限(所得税の場合、確定申告を行った年の翌年3月15日)から「5年以内」に行わなければなりません。ただし、特定の事情がある場合には、「その事由を知った日の翌日から2ヶ月以内」という例外的対応もあります。
3.修正申告と更正の請求の方法
では、それぞれの手続き方法をご説明します。
■修正申告
「所得税の修正申告書」に修正金額を記入して提出します。
1.修正した金額で確定申告書(第一表・第二表)を作成し直す
2.税務署に提出する
確定申告を電子申告・e-Taxで行った人は、修正申告も同じくオンラインで行うのがスムーズです(もちろん、税務署の窓口に提出、郵送など、他の方法でも可能です)。
国税庁 確定申告書等作成コーナーから修正申告をする場合は、ページ下部の「提出した申告書に誤りがあった場合」から開始してください。
修正した確定申告書の第一表では、下記の赤字・囲い部分が通常の申告書と異なります。しっかりと反映されているのか確認してから送信しましょう。
引用:申告書第一表・第二表【令和6年分用】
第二表では、「特例適用条文等」に修正理由を記入する必要があります。
詳しくは、国税庁のホームページで確認してください。令和6年分については「確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」から、それ以降については、更新された新たな情報を確認するようにしましょう。
■更正の請求
修正申告とは異なり、確定申告書とは別の書類を作成して請求します。
1.「更正の請求書」を作成する
2.事実を証明する書類とともに税務署に提出する
更正の請求書も、修正申告と同じく、国税庁 確定申告書等作成コーナーのページ下部「提出した申告書に誤りがあった場合」から作成・提出することが可能です。書類としては下記の仕様となります。
引用:令和6年分所得税及び復興特別所得税の更正の請求書・書き方
4.追加の税金が発生しても、自発的に修正申告すればペナルティなし
本来の申告よりも少ない税額で申告してしまうと、それが故意でないとしても「過少申告加算税」という税が課されます。修正申告によって追加で支払う税金に上乗せされるペナルティにあたるものです。
ただし、税務署からの指摘がある前に、自主的に修正申告を行うのであれば、過少申告加算税は課されません。追加の税金と延滞税(期限後納付による利息のようなもの)のみを支払えば修正は完了します。
ペナルティを免れるためにも、「修正申告が必要かも」とご自身で気付いた場合には、すみやかに修正申告をしましょう。修正申告がどれくらいの割合で実施されているかは公開されていませんが、決して少なくはないと言われています。税金を支払う意思があって行う手続きなのですから、税務署の方々も厳しい態度に出ることはありません。安心して相談してください。
5.確定申告の修正が必要ないようにするには?
先にお伝えしたように、確定申告の期限内に行う「訂正申告」については、(ご自身が混乱しない程度に)何度やっても問題ありません。また、「修正申告」や「更正の申請」も、正しい申告のためには必要であり、みなさんが思うほどハードルが高いものではないと考えてよいでしょう。
ただし、やはり間違いを事前になくし、一度での確定申告でしっかり終わらせることができるなら、それが一番です。
・会計ソフトや会計アプリを活用し、スキマ時間で日々の記帳を進めておく
・自分に適用される控除をリストアップしておく
・必要書類を管理し、確定申告に向けてあらかじめ揃えておく
・余裕をもって確定申告ができるような作業計画を立てる
このような対策を講じて、今年度の確定申告に備えるようにしましょう。必ず徐々に慣れ、ミスを起こしやすい部分がご自身でわかるようになります。アプリ活用のコツも掴めるようになり、スピードアップする上に節税のことなども考えられるようになるでしょう。「まだ先だから」と思わず、いまから取り組んでみてくださいね。
【スマホで簡単】FinFinを使って確定申告をしよう
個人事業主の確定申告は、会計アプリを使ってスマホで済ませるのがおすすめです。
スマホで撮影するだけでレシートや領収書が簡単に取り込め、仕訳も該当する項目を選ぶだけで完了します。税務署へ行かなくても、自宅にいながらスマホだけで確定申告ができます。確定申告をしたいと考えている個人事業主の方は「FinFin」を試してみてください。
記事監修者紹介

天野大 先生 天野大税理士事務所
1980年鳥取県米子市生まれ。約8年の税理士事務所での勤務経験を経て、2019年東京都府中市で天野大税理士事務所を開業。雇わない・雇われない働き方「ひとり税理士」。 小規模法人やフリーランス・個人事業主の税務を得意とし「ビジネスを通して社会を元気にする」を理念にスモールビジネス専門の税理士として活動中。