知らずに損してない?交通費・ガソリン代“見落としがちな経費”完全ガイド

副業やフリーランスを始めたばかりの方にとって、必要経費の線引きは悩みのタネ。「確定申告のために経費をまとめなければ…」と思いつつ、日々の支出の扱いに頭を悩ませていませんか?特に交通費や日用品など、私生活に密着している支出は「どこまで経費にしていいのか?」と判断が難しいもの。「打ち合わせで使った電車代はどう記録する?」「そもそも領収証がない時はどうすれば…?」「マイカーのガソリン代はどこまで経費?」そんな疑問や不安でいっぱいかもしれません。もし事業で使った交通費を適切に必要経費として処理していなければ、本来納める必要のない税金を納めてしまう可能性があります。この記事では、意外と身近な支出でも“業務目的”なら経費になるという基本ルールとともに、よくある経費の具体例をご紹介します。正しい知識を味方につけて交通費をモレなく計上し、かしこく事業を運営していきましょう。
目次
1.そもそも「経費」とは?判断基準は「事業目的」
まず経費計上の重要な判断基準の一つは、“その支出が事業の売上に結びつけるために必要であったかどうか”です。打ち合わせ場所へ向かう交通費は、事業に必要な支出なので経費になります。しかし、休日に家族や友人と遊びに行くための交通費は、当然ながら経費にはなりません。「購入したモノ自体」や「支払った場所」ではなく、その「目的」で判断する。このシンプルな基準を常に意識することが、経費管理の第一歩です。
2.【基本編】こんな交通費も経費になります
事業活動では様々な交通費が発生します。それぞれのケースでの正しい取り扱い方を見ていきましょう。
・領収証のない電車代・バス代
取引先訪問などで利用した電車代やバス代は、もちろん経費です。ただ、領収証が発行されないことも多いでしょう。その場合は、お使いのアプリにおいて「日付・支払先・摘要(A社B氏との打ち合わせなど)・金額」を記録しておくようにします。
・高速道路代やタクシー代
事業での移動に利用した高速道路の料金は、利用した分を全額経費にできます。ETCを利用している場合は、利用明細書をウェブサイトからダウンロードして保管しましょう。移動ルートを記録したスクリーンショットなどを残しておくと、必要経費としての説得力が増します。
また、「打ち合わせに間に合わない」「重い荷物を運ぶ」など、業務上の正当な理由があればタクシー代も経費にできます。必ず領収証を受け取り、余白に行き先などをメモしておくと、より確実です。
・マイカー移動にかかるガソリン代
マイカーを事業で使った場合、そのガソリン代は経費になります。ただし、プライベートでも車を利用している場合、事業で使った分だけを計算して必要経費にしなければなりません。この処理を一般に「家事按分」と呼びます。詳細は後ほどご案内します。
3.【応用編】もっと知りたい!交通費の効率化テクニック
・交通系ICカードの履歴をフル活用しよう
SuicaやPASMOなどの交通系ICカードは、交通費管理の強い味方です。モバイルアプリを利用すれば、いつでも過去の利用履歴を確認・出力できます。カード型の場合でも、駅の券売機で履歴を印字することができます。この履歴を根拠資料の代わりにすれば、一つひとつ手で記録する手間が大幅に省けます。
・スマホアプリで領収証管理をペーパーレスに
高速道路代やタクシー代、駐車場代などの領収証は、会計アプリの機能を使うと非常に便利です。撮影するだけで日付や金額を自動で読み取り、会計処理に反映されるのでとても便利です。
4.事業用と家事用(プライベート分)を分ける「家事按分」をマスターしよう
特にマイカーを事業で利用するうえで最も重要なのが「家事按分」です。合理的でわかりやすい基準を設定し、事業で使った分をきっちりと分けていきましょう。
ガソリン代や駐車場代、自動車税、自動車保険料などの車両関連費は、たとえば走行距離に基づいて按分するのが最も合理的です。
① 記録する
手帳やカレンダー、スマホのメモ機能でOKです。車に乗るごとに「日付、目的、行先、走行距離」を記録する習慣をつけましょう。
② 集計する
月末に、1ヶ月の「総走行距離」と「事業での走行距離」を集計します。
③ 計算する
「事業での走行距離 ÷ 総走行距離」で事業利用割合を算出します。
(計算例)
・1ヶ月の総走行距離 1,000km(うち事業での走行距離 400km)
・事業利用割合 400km ÷ 1,000km = 40%
この月に支払ったガソリン代が20,000円、月極駐車場代が30,000円だった場合、
・ガソリン代の必要経費の額 20,000円×40% = 8,000円
・駐車場代の必要経費の額 30,000円×40% = 12,000円
そのほかに、たとえばマイカーを平日は事業で使い、土日だけプライベートで使うということが明らかな場合、全体の車両関連費用のうち、7分の5を必要経費にするという方法などもあります。
まとめ ~ 帳簿を味方につけて、事業を加速させよう!
今回は、副業やフリーランス初心者の方が迷いがちな交通費の経費計上について、具体的な方法と効率化のコツを解説しました。
・経費の判断基準は「事業目的」であるかどうかということ。
・領収証のない電車代は「アプリへの直接記録」や「ICカード履歴」が有効であること。
・マイカーの費用はたとえば「走行距離」で家事按分するのが合理的であること。
・スマホアプリを使えば、交通費管理はもっとラクになる。
日々の交通費を正しく記録・計上することは、節税に直結する重要な作業です。しかし、手作業での管理や複雑な計算は時間もかかり、ミスも起こりがちです。会計アプリを導入すれば、スマホの画像から領収証を読み取ったり、按分比率を使って事業用経費を自動計算したりと、これまで説明してきた面倒な作業のほとんどを自動化できます。
交通費の処理を適切かつ効率化して生まれた余力と時間を、ぜひあなたの本業に役立ててください。
記事執筆者紹介
西原憲一先生 西原会計事務所
大阪市生まれ。大阪市立大学商学部卒。2000年に独立。
税理士、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
法人・個人の税務会計、資産運用、相続・事業承継設計などマネー全般の実務に携わる。各種セミナー講師、書誌やWebでの執筆・監修など、全国で活動中。